菰山展の開催地となる菰野町にはパラミタミュージアムという美術館があります。会期中には企画展「横山大観と菱田春草~近代日本画を築いた二人の挑戦~」が開催されています。
すでに開催中なので見てきましたが、春草と大観、二人が生きた時代の中を歩いているような気持ちになる展覧会でした。春草は若くして亡くなった画家なのですが、一通り見終わってから、もう一度春草が生きていた年代のコーナーに戻ると、そこには生きている春草がいるような、そんな感じがしました。

このパラミタミュージアムにはパラミタガーデンという庭というか、小さな森が併設されています。その森の存在もあるからか、ゆったりとした静謐な空間の中で、作品の方が語りかけてくるような感じがする、すばらしい美術館です。パラミタミュージアムはイオンの財団である岡田文化財団さんが運営しています。イオンはかつてジャスコであり、その前は岡田屋という四日市のお店でした。ジャスコの創設者で、イオングループの共同創業者である小嶋千鶴子さんがこのパラミタミュージアムを建てて、財団に寄付したそうです。小嶋さんは、今回の菰山展の会場のひとつとなっている馬酔木窯の森正さんと親交がありました。森さんはかつて四日市でおこった「集団DAC」という、デザイン・アート・クラフトの対公害運動を率いた人で、その展覧会がジャスコで開催された際に、小嶋さんが見に来てくれたのが出会いだったそうです。小嶋さんは美術品の収集の他、晩年まで馬酔木窯に通い自らの陶作品を制作し、2022年106歳でこの世を去りました。この菰山展のテーマにも美意識を鍛えることを挙げていますが、小嶋さんの文化芸術に対する姿勢、その美意識は、イオンさんの繁栄に少なからず影響を与えていることと思います。世界の企業で言うとアップルでも、美による差別化を図り成功を手にする話が有名ですが、そうした美意識を備える会社が増えることで、社会はもっと良くなるのではないかと思います。菰山展は作り手による展覧会ですが、社会を動かす現場にいる人たちにもっと関わってもらえると、今後よりおもしろくなるはずです。ぜひみなさんも他人事と思わずに美術館に、そして菰山展にお出掛けください。そして美術館は中学生以下は無料です(菰山展は特別企画以外は大人も無料)。小さい子でも観覧マナーを守れば見ることができます。社会に出てからではなく、小さい頃から美に触れる体験を増やしていってもらうと、社会はもっともっと良くなることだと思います。

三重県の文化をけん引する日本有数の文化財団、岡田文化財団の運営する菰野町の美術館。企画展会期中は無休というスタイルで、月曜日も開館している美術館です。



※ 観覧料など詳細はパラミタミュージアムホームページをご確認ください
MAP
パラミタミュージアム
三重県三重郡菰野町大羽根園松ケ枝町21-6